Twitterに 農業研究者のshinshinohara (@ShinShinohara) さんが投稿した呟きが多くの反響を呼んでいます。
一部上場企業の研究施設を案内されたとき。アドバイスを求められ「100℃近くで一晩反応させたらいいですよ」と伝えたら、「それはできません」との答え。え?ここ、研究所でしょ?
「定時になるとブレーカーごと電源を落としてしまうので、一晩中電源を入れるような実験はできないんです」— shinshinohara (@ShinShinohara) 2020年1月7日
いや、化学反応では高温で長時間反応させるなんてことはよくある話でしょ。
「職員がいない間に火災が起きてはいけないので、そうした実験はできないんです」— shinshinohara (@ShinShinohara) 2020年1月7日
えー・・・でもまあ、化学製品を作る企業だから、きっと燃えやすい有機溶媒とかが多くて、火災にとても慎重なんだな。うん、仕方ない。じゃあ、ここの施設でなくてもいいので、どこかできる場所ないですか?
「研究していいのはこの施設だけなので、他では無理です・・・他に方法がありませんか?」— shinshinohara (@ShinShinohara) 2020年1月7日
いや、他の方法を見つけるためにも、確実にできる方法から検討して、徐々に省略する方法を探っていくのが研究の定石だよ。改善方法を研究する前に改善方法が見つかったら超能力者だよ。
「そうですよね・・・」
結局その企業では私のアドバイスを採用することができず、開発はできないままに終わった。— shinshinohara (@ShinShinohara) 2020年1月7日
別の企業では、こんな話があった。
「カッターは使えないんですよ。というより、ない。ケガするから」
え?まさか?ちょっと切るだけなのに?じゃあ研究材料を切断するにはどうしたらいいんですか?— shinshinohara (@ShinShinohara) 2020年1月7日
「カッターを使える部屋があるので、その部屋で作業をしてよいかという申込書を作成して、許可をもらえたらその部屋で、安全手袋をしてからカッターで切ります」
え?これをちょっと切るだけですよ?書類を作成して、提出しなければいけないんですか?
「ええ、労災ゼロを目指していますから」— shinshinohara (@ShinShinohara) 2020年1月7日
私はゲンナリした。
カッターで切るだけなら、引き出しからカッターを取り出し、材料を目的のサイズに切るのに5分もあれば済む。しかし書類を提出して許可を得ないといけないとなると、まず、どの書式を使えばよいのかで戸惑うかもしれない。— shinshinohara (@ShinShinohara) 2020年1月7日
書式のことを知っている担当者を突き止めるのに30分かかるかもしれない。その人に書式をメールで送ってもらうのに10分、書式に必要事項(所属、名前、目的は何か、いつからいつまで作業をするのか)を記入して自分のハンコを押すまでに20分、
— shinshinohara (@ShinShinohara) 2020年1月7日
上司にチェックしてもらって了解を得、提出する担当部局を聞き、何をするつもりなのか聞かれ、説明し了承を得るのに30分、カッターがどこにあるのか分からず、手袋もどう着用すべきかから説明を受けて30分、それからサンプルを切断し、作業が終了したむねを担当部局に報告して、ようやく終わり。
— shinshinohara (@ShinShinohara) 2020年1月7日
「あ!ここのところ、もうちょっとこう切ればよかった!」なんて思っても後の祭り。もう一度同じ作業をしなければならない。5分で終わるはずの作業が、半日かかってしまいかねない。
— shinshinohara (@ShinShinohara) 2020年1月7日
人間の精神的エネルギーは「限られた資源」で、1日に消費できる量は決まっているといわれる。研究は、多様な試みをいかにたくさん行うかが決め手。しかし、カッターひとつで手続きに半日かかるなら、それだけで精神的エネルギーを消耗してしまいかねない。私なら「もういいや」となってしまいそう。
— shinshinohara (@ShinShinohara) 2020年1月7日
労働災害を減らさなければならないのは研究でも同じだ。しかし、研究は自由な発想をどれだけ迅速に検討するかで、創造的な成果を出せるかどうかが決まる。カッターひとつ使用するのに許可が要るようでは、研究を窒息させてしまうようなものだ。
— shinshinohara (@ShinShinohara) 2020年1月7日
すでに作業工程が明確な工場ならば、不必要な器具を撤去し、整理整頓を心がけ、事故が一切起きないように心がけることが大切だ。だが、研究では、ちょっと思いつきを早速試してみるというフットワークの軽さが重要だ。それに手続きと時間が必要となると、「めんどくさ」となってしまう。
— shinshinohara (@ShinShinohara) 2020年1月7日
日本企業からイノベーティブな商品が出なくなっている原因のひとつに、工場などの「正解のある世界」のルールを研究にまで適用し、研究を窒息させていることがあるかもしれない。事故は起きないが研究成果も出ない。
こんなアホなこと、欧米でもやってるのかな?まさか、と思うよ。— shinshinohara (@ShinShinohara) 2020年1月7日
山口県を旅したとき、たまたま、少年兵として戦艦大和のレーダーに油を挿しに行ったことがあるという老人と出会ったことがある。そのときに聞いたエピソード。レーダーで敵機を察知すると、書類を作成して何人ものハンコをもらい、ようやく空襲警報を鳴らしたときには敵機が爆撃の最中だったという。
— shinshinohara (@ShinShinohara) 2020年1月7日
そんなことやっていたら負けるわ、と、その老人も思ったという。いま、私はそんな気分。アメリカ、ヨーロッパはおろか、中国韓国でもそんなことはしていないだろう。そりゃ負けるよ。どんな国にだって。
— shinshinohara (@ShinShinohara) 2020年1月7日
投稿に寄せられたコメント
学生時代は研究室に泊まり込んで、サントリーホワイトを飲みながら、実験をしてた。
研究室には先輩達から譲り受けたボロい寝袋があった。
相棒と交代で、実験装置を使用してた。
そこまでやっても、中々先輩を上回るデータが取れなかった。
教授は、血のションベンが出たら初めてデータはとれるって!— 鶴田電機株式会社 (@Di3Eo7R3yae55V4) 2020年1月7日
国内最高峰の通信の研究所でも同じような状況です。限定的にしかインターネット接続できないとか、許可されたアプリケーションしかインストールできないとか。例外を認めてもらうには何日もペーパーワークに費やす必要があったりします。
— むね (@nickel0) 2020年1月7日
ヒヤリハット、KY(危険予知)、、など、失敗に対する再発防止を積み重ねないと、心配で心配で死んでしまう日本人の国民性の行末です。ただ根源は、親御さんから預かった大切な息子さんを朝来た姿で帰すのが現場監督者の最大限の責務、という精神からきており、全てを否定する物ではないと私は思います
— ゲン(Digi-gen) (@type_g) 2020年1月7日
これは、単なる笑い話
それとも、ドキュメントですか?
もしドキュメントなら、その企業は研究は終わってますね。働き方改革が、日本企業を弱めていると言う事でしょう。
安易な残業規制を行うとこのように、悲惨な事が起きてしまう。— 鶴田電機株式会社 (@Di3Eo7R3yae55V4) 2020年1月7日